二次創作絵等ブログ。
by aru
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~探しものをみつけた日~

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人外アパートのエデア&リオに、友人が小さな物語を届けてくれました。
感謝の気持ちと共に、彼らの夏のワンシーンとして大切に掲載させてもらいます。
幸せををありがとう。















探しものをみつけた日












照りつける太陽をものともせず、こちらに近づく影が一つ。

下町の風情が残るこの町の景観は決して珍しいものではなかったが、遠目にもそれは奇妙な光景にうつった。
葉が緑を濃くして夏の日差しを懸命に受け流すこの時期に、男は赤味の入った厚手のコートを羽織っているのだ。
ボタンは上から下まで閉めきってあり、両の手にもきっちりと皮の手袋がはめられている。
なおかつ足の先まで収まる長いズボンを履いて平然として歩いているのだ。

ここまでくると、身だしなみに並々ならぬ執着を持つ人間なのか、はたまた変わった趣向の持ち主かとも思うのだが、見る人はその男が自分と距離を縮めるにつれその理由が自ずと知れてくる。

白昼晒されたその顔は、とうにこの世に別れを告げた死人のものであった。


腐れているが不思議と匂いがない。
当たり前だが、彼には痛覚もなかった。炎天下も氷点下もこの男には同じである。


「エデアさん、帰りかい。」
「ああ、じーちゃんか。」

道の角に差し掛かった所で、古道具屋とも何でも屋ともつかぬような店からしわがれた声がかかる。
建てた年は定かではないが、いつ倒れてもおかしくないような傾き方をしたボロ屋で、見慣れない者は、店をくぐるのさえ度胸がいる。
親爺は人相こそ悪いが、中身はただの孫が可愛い好々爺だ。
週末にみっつの孫娘が娘に連れられて遊びに来るのが、生きがいらしかった。

「今日はやけに早いじゃないか。サボリかい。」
「やだな~俺ってばこーみえて、じいちゃんと同じハタラキモノって人種なんだぜ。
こないだバイト先の知り合いに夜勤代わってくれってせがまれたんだ。野暮用が入ってどうしてもって言われてさ。んで、今日はその礼に俺の分までちゃきちゃき働いてくれてるってわけ。」

エデアの勤め先は、その容姿を存分に活かしたお化け屋敷である。
この時期は暑さを逃れて、心身共に涼しい風を入れたい子供連れやアベックでずいぶんと賑わう。
ここぞと稼ぐ書き入れ時だ。
休みもそこそこに、一日中人を待っては驚かせる仕事だ。
根気のいる立ち仕事ゆえ、時給も悪くない。
そのかわり仕事にむらっけは許されず、滅多な理由でもない限り仕事に穴は空けられないのだ。

「やれやれ、そいつは良い事だな。そいで、結局お前さんの知り合いの用ってのはなんだったんだい。」
「女さ。」
「はは、そりゃあ羨ましいもんだなぁ。」
「そうだったらよかったんだが。どうもね、身体が弱いらしい。」
「長くないってのか。」
「前より随分身を入れて働いてるからな。見込みがないってわけじゃあないんだろうさ。」

軽い口調だったが、情がないわけではない。
二人の間にしばし沈黙が落ちた。

すると暫くして親爺が腰をあげた。
曲がった背筋を伸ばすことなく、暗い店内に入っていくと、ガラクタを無造作に押しのける音がした。ほどなくして戻ってきた彼の手にはなにやら古めかしい紙が握られている。

「お前さんを呼びとめたなぁな。これを見せたくてさ。」
「はは、この店はほんとに何が出てくるかわかんねぇな。俺が生きてた頃より年期はいってそうじゃねぇ?コレ。」
「今朝がた仕入れた物の中にたまたま入っててな。お前さんとおんなじたぁ言わないが、だいぶいい線いってるぜ。」
「なんだって?」

開けてみると、日に焼けて茶けたそれは一昔前の手配書だった。
見まごうはずもない、生前の自分の顔がそこにある。

「おめぇ、なかなか男前じゃねぇか。」
「よくもまぁこんなものがまだ…。俺、今の顔じゃ、特徴跡形もねーから、手配書の用なさねーけど。じーちゃん、俺を突き出す気かい?」
「まさか。記念にやるって言ってんだ。」

笑い皺をもみくちゃにして、親爺が笑う。

「記念…ねぇ。」

陽に透かしたり、眺めたりしながら、エデアはおどけた口調でつぶやいた。










「確かにたいそうな名前を頂戴したが、海賊を護る女神なんて何処にいるってんだ。そうだろう。」


海賊船のへりに一人腰を下ろして、念入りに鞭の手入れをする青年が、昔、確かに居た。そしてそれと同じように確かに死んだのだ。

脅しつけて背筋を震わせて命ごいをする行商人は、悪名高いその名を呼んで、より一層自分を恐怖の淵へと追いやった。
攫った乙女がその名を口にする時は、憂いと熱に浮かされて、涙と一緒に唇の端からこぼれただけだった。
仲間内からは、畏怖の念を込めて、…そう時には、憎しみを込められて呼ばれることもあった。



エデア。






「誰でもいい…誰か…。」















まっすぐ帰るはずが、すっかりたそがれ時である。
親爺にすっかり捕まったなと一人ごちしながら、エデアは夕日に染まったアパートの階段を上っていった。
コートの裏ポケットには、なんだかんだといって持たせられた例の手配書が収まっている。どう処理したものかと思案した。

というのも、このアパートには男やもめで入っているわけではない。
親爺に勤め先の男の話をしたエデアだったが、実際彼自身も男とそう変わらぬ暮らしをしていたのだ。
女と住んでいる。

名前はリオといって、歳も若く色白の愛らしい顔をした娘である。
南国の海から連れてでてきたように青い髪を持ち、おっとりとした気性とは裏腹に、炊事、洗濯とよく働く。
にこにことした表情が、ひょんなことから瞬くとブロンズの瞳が垣間見えて美しかった。
そして何よりエデアと違い、生身の、生きた人間だったのである。

エデアがこの娘と暮らすに至った経緯は定かではないが、二人は生ける者と死者という境を越えて、当たり前のように寄り添って暮らしているらしかった。

戸口の前に立っていると、彼女が台所に立って葱を刻んでいる音がする。
ゾンビの体になってから、専ら醗酵食品ばかり食べている自分の主食に納豆は多い。
それにそえる為らしい。もちろん味覚はなかったが、毎回律儀に用意してリオはエデアの帰りを待つのだ。

気配に気づいたのか。
スリッパをつっかけた軽い足音が近づいてくる。

「エデアさん。こんな所でどうしたの。」

戸を開けてリオは目を丸くしている。

「中に入らないの?」
「リオさん。」

これ、おみやげ。と言ってリオの手に懐から取り出した手配書を差し出した。
受け取ったリオは手配書と目の前の男の顔をかわるがわる見て、そっと口を閉ざした。

「俺、悪い奴なんだぜ。リオさん」

笑っているようだった。

「…リーオさん……。」
「…。」

陽気に、ただ丁寧になぞって確かめるような響きだった。

「なんだかな。感傷に浸るような性質じゃねぇんだけどな…。」

リオはあいかわらず次の言葉を辛抱強く待っている。

「…生まれた時から悪党の子で、死ぬときも悪党で終わった。そんで徹頭徹尾それでいくはずだったんだ。…死んだ後も。」
「今のエデアさん、悪党じゃないわ。」
「そう。…それを考えてた。なんで悪霊にならずにすんだんだろって。」

一体自分に、何の望みを残していたというのか。
堕ちる意識の中で、何かを手繰り寄せてこの世に蘇った事には違いないが、その正体はいまだに掴めていなかった。
だが生前も、そして死んでからも、決して手に入らない物だと、半ば言い聞かせるようにしていた探し物が、此処に二人で住み初めてから、すぐ其処まで近づいてきているような気がする。

やっと顔をあげたエデアがリオの顔を見つめた。
血が通っていないはずの目が、彼女の顔を鮮明にとらえている。

「…俺は誰かに名前を呼んで欲しかった。親しみとか…なんでもいい…。とにかく…例えば俺に側に居て欲しくって呼ぶような…そんな名前の使い方。」
「…そう。」
「…でも、違ったんだよな。」
「え?」

エデアは一瞬パッとはにかんだかと思うと、おもむろに自分のコートを脱いでしまった。
二人が居るのはまだ玄関もくぐっていない廊下である。
リオは話も忘れて慌て出した。


今なら、長年探し続けたそれが掴める。


エデアは気にもせずリオを頭からコートですっぽりくるむと、そのまま抱き寄せた。

コートの下でリオが照れ隠しに、今日は洗い立てじゃないからいいけど等とブツブツ言いながらふてくされている。





「俺が名前を呼んでみたかったんだよ。リオ。」






アパートのどこからか、楽しそうな子供達の笑い声が聞こえてくる。







・・・Fin?
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by 2-ji | 2011-11-15 14:56 | ▲ 創作キャラ 【New!】
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