二次創作絵等ブログ。
by aru
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最終回その一

夕方シェシェがふと庭先を見ると、リシーヤが長旅から帰ってきていた。
「おかえんなさい」
シェシェはつっけんどんけんに言うと、黙ってつっ立っている兄に背を向ける。
この兄ときたら、今までで一番の長旅だったにも関わらず
いつものように旅先からの土産も、手紙の一つさえもよこさなかったのだ。
(どれだけ心配したと思ってんだか、人の気も知らないで)
シェシェは早足で台所に入ると夕飯の仕度を始めた。
兄が旅を再開して数ヶ月、もう家事はすっかり板についてしまっていた。

家の中から聞こえてくるリズミカルな包丁の音に耳を澄ましながら、
リシーヤはまだそこに立っている。
そしてゆっくり仮面に手をやると、あの難解なリシーヤ語で
『やっと、見つけた・・・』
と、そう呟いた。

夕飯後リシーヤは、まだ機嫌の悪いシェシェを庭先へ連れ出した。
この里は極めつけの高山地。
日が沈むと大粒の星々が闇を埋め尽くす。
星空を眺めて、小さな妖怪は落ち着きを取り戻したらしい。
リシーヤに、ごめんなさいと小声で謝った。
それを聞くとリシーヤはいつもの難解な言葉で
『やっと見つけたよ』 と返す。
「桃源郷?!」
シェシェが目を輝かせる。
『いいえ、私の桃源郷ではない。あなたの・・・』
「え?何のこと?」
『シェシェ、あなたはもう大丈夫』
いつも以上に意味の分からない事を言う兄に
シェシェは妙な違和感を覚えた。

『目を閉じなさい』
「兄ちゃん、さっきから変」
シェシェはそう言ってそっぽを向く。
『・・・・・・・・・シェシェ』
「・・・・・・」
リシーヤは妹の名前を何度か呼んだ。
その度、声が少しずつ小さくなってゆく。
妙な寒気に襲われて振り向いたシェシェの目に映ったのは、消えかけた兄だった。

叫び声が里に響く。
シェシェは泣きべそをかきながら何度も兄を呼ぶが、その姿は見る間に透けていく。
「兄ちゃん!誰か、助けて!兄ちゃんが!!」
そう言って辺りを見回し、再び大きな悲鳴を上げる。
妖怪の里も兄を追って闇に消えようとしているのだ。
後ろの景色が透ける程になった兄は、うろたえる妹にこう言った。
『目を・・・閉じてごらん・・・』


  ・  ・  ・


シェシェは他にどうすることもできず、ただ言われるままに目を閉じた。
するとどうだろう、目蓋の闇は降りてこない。
そこに浮かんできたのは雨の降る石畳の街だった。
通りの奥に、うずくまって泣いている女の子が見える。
自分によく似ている。
あれは、わた・・・嫌、違う、認めたくない。
私は妖怪で、人間じゃない・・・。
「あっ!」
兄ちゃんだ!
兄ちゃんが、あの子に近づいてく!
何?何か言ったの?
あの子になんて言ってるの?

『何故生きることを拒む』
それはシェシェの脳裏にも直接語りかけた。
「! ・・・それは・・・」
女の子はそこで力尽きてしまったようだが、
シェシェには、リシーヤがかけた次の言葉もはっきり感じとれた。
『逃げては理想が遠のくのみ・・・踏み出しなさい』
「・・・・・・」
『道標は敷いてある、全てあなた次第・・・』
そこまで言うと兄は女の子を抱え、裏路地へ入って行ってしまった。
いつの間にか通りを歩く人は消え、雨音の中立ち尽くすシェシェが独り、そこにいた。


  ・  ・  ・


「分からない」
シェシェは震えながら声を絞り出した。
するとまた、あの声が頭に響く。
『何故、歩もうとしない』
驚くまでもない。
兄の意思だ。
声とは違う、この思いは・・・前にもこんな風な・・・
「どこ?どこに行けばいいの?!」
『踏み出しなさい、全てあなた次第』
「兄ちゃんなの?!」
『道標は敷いてある』
「・・・・・・」

シェシェは暫く黙り込んでいたが、兄を追うように歩きかけ・・・
『逃げては理想が遠のくのみ』
「?!」
『逃げ続ければ、いつしか二度と・・・』
「なんで・・・?そっちへ行っちゃ・・・駄目なの?」
シェシェは涙ながらに訴えたが、兄の言葉はそれ以上聞こえることはなかった。


▼ 続
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by 2-ji | 2008-08-21 11:39 | ▲ 創作キャラ 【New!】
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