二次創作絵等ブログ。
by aru
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最終回その二

やがて彼女は兄が消えた路地を背にして、とぼとぼと歩きだした。
兄の言葉は裏切りに等しかった。
心臓が締め付けられるように痛い。
寒くて、息が苦しい。
それでも、戻ることも、ここに居ることもできないという。
雨で冷えた体の重みを感じながら
真っ直ぐに続く街道を歩く他、どうしようもなかった。

通りを抜けた突き当たりには、古ぼけた病院があった。
雨の降りしきる中、なぜか重たそうな門は開け放たれている。
シェシェは吸い寄せられるように病院の中へと歩みを進めた。
薄暗くがらんどうな廊下の一番奥、
入院患者用の個室の前でその足が止まる。
その部屋で寝ていたのは自分にそっくりな、あの人間の女の子。
「!!」
シェシェの顔が恐怖に歪んだ。
その子を見たとたん、自分の体も兄のように透けはじめたのだ。
同時に視界もぼやけてくる。
体の感覚が遠のいてゆき・・・
"妖怪 シェシェ" は、跡形も無く消えてしまった。


  ・  ・  ・


視界が暗い。
徐々に硬いベッドの感触がはっきりしてくる。
私は元に戻った。
人間の私に戻ったんだ。
もう、過去の記憶も鮮明に解る。
以前、兄が言っていた
『泣いて死にたいと言っていた、記憶が無くなる前の私』は
生前の私だったんだ。
そして生きることをやめようとしていた私を、偶然通りかかったあの妖怪が・・・
リシーヤ兄ちゃんが、助けてくれた。
でも・・・どうして人間に戻ったんだろう。
何で病院のベッドに寝ているんだろう。
病院?・・・そうか、ここは、さっき見たあの病院のベッドなんだ・・・。

シェシェは、ずっと目を閉じたままだった。
目を開けたくなかった。
開けたら、自分が人間になったことを認めなくてはいけない。
私は、生きることを拒んだ。
こんな私が今更人の世界に戻って独り、一体どうすれば良いのか。
目蓋の闇の中で、兄の言葉を思い出す。
『あなたの桃源郷を、見つけたよ』
あれは、この病院のことを言っていたの?
そんなの、全然嬉しくない。
いきなり突き放された私はどうなるの?
もう戻れないの?
二度と兄ちゃんにも皆にも会えないの?
この先、何があるっていうの・・・?


  ・  ・  ・


その時だった。
ぞっとする程冷たい細い手が、シェシェの頬に優しく触れた。

わかる。
妖怪だった時は温かかったけど、この手は・・・
「・・・・・・兄ちゃん・・・」
シェシェはかすれた声を上げた。

優しい想いが頭の中に響く。
『私は、ずっと傍にいたよ』
シェシェは想いをこめて(うん)と返した。
まるで初めて会った、あの意識の消えかけた時のように。
『待たせてすまなかった・・・もう大丈夫』
(うん・・・)
『何も怖くないから・・・さあ、目を開いてごらん』
「・・・・・・」
シェシェは最初ためらっていたが、ゆっくりと目を開きはじめた。
目が開くにつれて、兄の手の感覚が無くなってゆく。
『・・・再見』
視界が真っ白になり、かすかな兄の声が遠ざかっていった。

シェシェは病院のベッドに寝ていた。
周りを医師やら看護婦やらが取り囲んでいる。
「目を醒ましたぞ!」
医師と目が合うと、彼は喜びとも驚きともつかぬ声を上げ、看護婦達がどよめいた。
シェシェはよく成り行きがつかめず、ぼんやりとその様子を眺めた。


  ・  ・  ・


意識を取り戻したシェシェは
自分をとり囲む人達に、自分は何故ここにいるのかと尋ねた。
彼らは困ったように少し顔を曇らせたが、
医師がシェシェの顔の高さまでしゃがみこんで、こう言った。

「君は、心臓が完全に停止した状態でこの病院に運ばれてきたんだよ。
 運んできたのは・・・確か背の高い男の人だったような・・・。
 その人はものも言わず、大きな宝石一つと君を残して去ってしまったんだ。
 そして君は当時すでに、心停止後かなりの時間が経過していて、
 私たちは過労と飢餓による死亡と判断し、一旦君を霊安室にやった。
 だが・・・その、奇妙な話だが、
 その夜、この病院に勤務する者全員が夢を見てね・・・。
 誰かが夢の中で、彼女は必ず生き返ると繰り返し囁くんだ。
 何日もこの夢が続き、僕達も流石に気味悪くなって
 この病室のベッドに君を寝かせた。
 ・・・それが一昨日のことだ。
 そして昨日の夜、例の夢を見なかったんだ。
 まさかと思って病室へ来てみると、
 君が息を吹き返し、うわ言を言っていた・・・。」

言い終えて、彼は改めてシェシェの顔を覗き込んだが、
彼女は依然として無表情のままだった。
シェシェは話を聞き終えた後もずっと考えを巡らせていた。
(私を運んできた男性・・・きっと兄ちゃんだろう。
 どうして魂の抜けた私の体をとっておいて、
 わざわざこの病院に持ってきたんだろう。
 なんで瀕死の私を助けたんだろう。
 そしてなんで、私を人間に戻してしまったんだろう。
 私の桃源郷なんか、どこにも無いのに。)
シェシェの空ろな目は瞬きを忘れ、
感情の無い涙がひとしずく、そっと流れた。

「兄ちゃん・・・」
シェシェは虚ろな目で呟いた。
「・・・もしかして、君を運んできた男の人は・・・」
医師は、知ってか知らずか神妙そうに言った。
シェシェは涙を拭おうとさえしない。
「・・・その、君が心配していることなら、多分大丈夫だよ。」
「・・・?」
言われ、シェシェは初めて医師の目を見た。


▼ 続
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by 2-ji | 2008-08-21 12:25 | ▲ 創作キャラ 【New!】
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